溢れ出る加齢臭

カレー臭に加え加齢臭が溢れ出る年齢になりました。

簡単に説明するって無茶だと思う

僕の仕事は調査・分析を行ってクライアントに報告するというのが、ほとんどである。
クライアントと打ち合わせを行う前に、上司と打ち合わせるのだが、その際によく言われるのが、以下の台詞である。

「ちょっと、簡単に説明して」

この言葉を聞くと、いつも僕は困ってしまう。これを言った人の要求は、概ね次のようなことになるだろう。

  • 文字数をできるだけ少なく「手短に」説明する。
  • 内容がわからない人でも簡単に理解できるように「わかりやすく」説明する。

前者は、単純に文字数を減らして要点だけ説明すればいいので、エッセンスだけかいつまめばよい。説明すべき内容の優先順位をつけて、制限時間に合わせてどのレベルまで説明すればいいかを選べばいいだけだ。
問題は後者の要求である。
分析結果の説明ならば、結果の図やグラフを駆使して「簡単に」「わかりやすく」説明することもできるだろう。
しかし、僕が、いま、この台詞を言われる状況は、「分析手法」についての説明である。
僕が「分析手法」を簡単に説明しようとすれば、例えば△△の条件の下で、○○式を用いて、■■という計算方法により、××を求めるといった言い方になるだろう。しかし、この説明で理解できるのは、この用語で省略された内容を理解もしくは類推できるだけの知識を持った人に限定される。僕が行っている分析は、せいぜい大学の一般教養レベルの数学を用いているので、理系の人間としては難しい数学は使っていないと思っている。しかし大学を出て10年、20年経過すると脳みそが退化して、高卒レベルの数学しか理解できなくなっている人も多い。そういう人にわかりやすく説明するためには、バックグラウンドとなる理論なども「丁寧に」説明する必要が出てくるわけだ。そしてそれは大学などで一生懸命勉強したり、会社に入ってからも専門書で調べながら身につけた知識であり、習得のための投資をして得た知識である。それを「簡単に」「わかりやすく」盗もうなどとする輩にタダで教えてやる必要がどこにあるのだろうか。しかも「わかりやすく」説明するために(しかも社内に)内容を再構築するためのコストもバカにならない。
分析の厳密性を追求するため、分析に使用する理論はどんどん高度化しており、計算は複雑になってきている。その一方でプロセスの透明性が求められており、知識のない人にわかりやすく説明することが求められている。たとえて言えば、小学生にベクトルを説明するようなものだ。
そんなレベルのものを「簡単に」「わかりやすく」説明するのは無茶である。
正直、自分の無知を棚に上げて、そんな要求をするのはやめていただきたい。そういう風潮が技術者軽視につながるよなー、などと思う。