溢れ出る加齢臭

カレー臭に加え加齢臭が溢れ出る年齢になりました。

自転車道のためだけの道路の拡幅はたぶん無理

 よく、自転車道や自転車レーンの整備が必要だと言っている人はいるが、特に自転車道だけを作るのは不可能だと言わざるを得ない。その理由として、

  • 自転車道だけのために道路を拡幅するという事業に対して予算がつかない。
  • 沿道の敷地単位で用地買収をする必要があるので、道幅に対して用地買収面積が大きくなるため、その結果として事業費が割高になる。
  • そもそも雨の日にほとんど使われないような空間のために予算を投入することに対して地域住民のコンセンサスを得ることが難しい。
  • 自転車道とは基本的に健康な人が使う道路であることから、障碍者の人達からのコンセンサスを得ることが難しい。

ということが挙げられる。
 1点目の予算の問題については、例えば国土交通省では道路整備を行う際には費用便益分析を行って、投資効果の分析を行っている。
 道路の投資効果のうち道路を直接利用することによる効果の大部分は移動時間の短縮効果である。
 自転車道については自動車から自転車に交通手段を変えることで時間短縮されるケースは、大都市部の近距離交通を除いてそうそうないだろう。むしろ環境面や健康面の効果の方が高いはずである。しかし環境面については時間短縮効果に比べると金銭的な効果は相対的に低いので対した効果はない。また健康面については効果の計測手法が確立されていないので評価のしようがない。その結果、自転車道を作ることの費用に対して優位な効果を出せないのである。
 2点目の問題として例えば自分の家が道路に面していて、家が敷地境界から1.5m離れていて、行政から2mだけ拡幅するので、その分だけ土地と建物を買いたいと言われたらあなたはどう答えるだろう。2m分きっちり土地と建物を渡して、歩道のすぐ横が家でしかも壁がない家に住みたいだろうか?普通なら土地と建物全てを補償して貰うか、土地を2m幅分だけ売って、残った土地で家を建て直すために建物全てを補償して貰うかのどちらかだろう。このように2mの拡幅でも買収額は大きくなるのである。おそらく普通の道路整備と変わらないのではないだろうか?
 3,4点目は自転車という交通機関の特性に起因する問題である。傘を差して乗るのは危険なので是非止めてもらいたいところであるので、合羽を着ない限りは雨天時には自転車道はほとんど使われることはない。ましてや積雪時に乗る人はまれであろう。従って自転車道とは悪天候の際にはほとんど利用されないムダなインフラになるのである。このような道路のために予算を投入することにコンセンサスは得られるだろうか?*1
 また、自転車とは基本的に健康な人が一人で乗る交通機関である。自動車のように福祉車両として使うことはできないし、車椅子の人が自転車道を通ることもできない。このように自転車道を使うことができるということ自体が、非常に恵まれた人なのである。自転車道そのものはユニバーサルデザインという観点からかけ離れた装置なのである。
 したがって、全く新規に自転車道を作るためには、新しい道路の整備や既存の道路の拡幅に合わせていっしょに自転車道を作るしかない。しかし、自転車道が望まれる道路のほとんどは、都市内の既に拡幅が終わった幹線道路であり、これ以上の拡幅が不可能な道路である。
 予算、警察のリソース、今の道路交通の状況を考えるとなかなか有効な解は浮かばない。

*1:もっとも積雪地では自転車道を堆雪帯として使うことはできる。ただし近年は融雪装置のある道路が増えたので堆雪帯自体の必要が減っている